Nekohana Blog

くうねるくらす旅をする

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』の感想・レビュー

差別はダメだ、差別をなくそう、と学校や社会で教えられるけど、根本的な解決になってない気がするんだよなぁ。
子どもと差別について話すときにどう話していいかわからないや。

そんなモヤモヤに寄添う1冊です。
この本を読んで自分を取り囲む社会について、自分自身について改めて考えてみませんか?

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
ブレイディ みかこ
新潮社
売り上げランキング: 5

1.私なりのまとめ

アイデンティティは他者と自分は違うことを認めることから始まる。

本書は、その認める瞬間を英国で暮らす中学生の「ぼく」の生活から切取り、紡いだ物語。認めるきっかけは「差別」に限るけど。

2.こんな人におすすめ

・多様性について思考を深掘りしたい方

・差別にどう対応していいか困っている方

・子どもとの会話や接し方に悩んでいる方

・イギリスでの生活の様子を垣間見たいと思う方

3.『ぼくはイエローでブルーで、ちょっとブルー』の概要

とはいえ、まるで社会の分断を写したような事件について聞かされるたび、差別や格差で複雑化したトリッキーな友人関係について相談されるたび、わたしは彼の悩みについて何の答えも持っていないことに気づかされるのだった。

…(中略)

「老人はすべてを信じる。中年はすべてを疑う。若者はすべてを知っている」と言ったのはオスカー・ワイルドだが、これに付け加えるなら、「子どもはすべてにぶち当たる」になるだろうか。どこから手をつけていいか途方にくれるような困難で複雑な時代に、そんな社会を色濃く反映しているスクール・ライフにぶち当たっていく蛮勇は、くたびれた大人にこそ大きな勇気をくれる。

きっと息子の人生にわたしの出番がやってきたのではなく、わたしの人生に息子の出番がやってきたのだろう。

 

『ぼくはイエローでブルーで、ちょっとブルー』
「はじめに」より一部抜粋

 

本書の目次は次のとおり。

目次

1.元底辺中学校への道

2.「gree/グリー」みたいな新学期

3.バッドでラップなクリスマス

4.スクール・ポリティクス

5.誰かの靴を履いてみること

6.プールサイドのあちら側とこちら側

7.ユニフォーム・ブギ

8.クールなのかジャパン

9.地雷だらけの多様性ワールド

10.母ちゃんの国にて

11.未来は君らの手の中

12.フォレスター・チルドレンズ・ストーリー

13.いじめと皆勤賞のはざま

14.アイデンティティ熱のゆくえ

15.存在の耐えられない格差

16.ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとグリーン

4.感想

人種差別がダメ、性差別がダメとあらゆる差別を禁止したところで行きつく先は「平和な世界」が表面上出来上がるに過ぎない。表面だけ取り繕ったところで、差別を根源とした政治や経済上の隔たりはなくならないのが現実だ。それは子どもたちの世界でも同じで、彼らはそんな差別から自分を守るために戦い、友達や家族と痛みを分かち合ってい、争いながらも友情を育んでいく。

おそらく、差別問題に必要なのはそんな逞しさなのだろう。中学生の「ぼく」と母親である著者の軽やかな会話を通して、ビッグでヘビーな社会問題が浮き彫りにされる本でした。何より、そんな差別を通して、「ぼく」は何者なのか、アイデンティティを形成していく過程が印象的でした。

5.さいごに

いかがだったでしょうか。イギリスで暮らす著者のエッセイかなと思っていたので、予想を見事に裏切る内容でした。
本書の紹介帯で「これは私たち一人一人の問題だ」と三浦しをんさんが評されていましたが、まさにその言葉通りです。

こんな本にはなかなかめぐりあえないんじゃないかと思うくらい衝撃的な本で、すべての人に読んでほしい、一押しの一冊です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それではみなさん、ごきげんよう。